地理教育部会 2013年度 10月例会

日 時: 2013年10月19日(土) 

場 所: 大阪教育大学天王寺キャンパス 中央館 514教室

参加者
正木 久仁(大阪教育大学) 磯  高材(元大阪市公立学校長) 
奥舍 憲雄(金蘭千里中・高等学校)  武内 正夫(元大阪府公立・私立高等学校長・清風南海中学校)
岡森 啓(清風南海中・高等学校) 
冨田 健太郎(清風南海中・高等学校)



 「統計と時事問題からみるアメリカの産業、経済」 岡森 啓 

帝国書院から「地理・地図資料」のいきいき授業実践の原稿依頼を受けた。そこで、アメリカ合衆国の工業と経済についての授業実践をデトロイト市破綻の新聞記事を使用して、様々な統計、自動車業界の実態などを交えて考えてみた。

 デトロイト市は自動車産業の企業城下町として紹介されている。そのデトロイト市破綻の原因はゼネラルモーターズ(GM)との関係が大きい。

 新聞記事を使う授業は多いが、まず新聞の見出し・リード部分を読み、記事の要点を把握させる。その後、GM破綻の原因を長期的・短期的視点で統計などをみて考える。

 たとえば、世界における自動車の生産台数の推移やガソリンに関係する石油価格の動き、日本の自動車メーカーのアメリカ現地生産台数や市場シェアなどである。

 これらの統計からわかることは、アメリカの自動車生産台数は大きく落ち込んでいないが、アメリカ自動車メーカーに限ると、その地位は低下していることがわかる。

 日本の自動車メーカーが優位に立つのは、車の燃費性能ばかりではなく、自動車工場の生産性も関係する。ロボットなどの導入もあるが、労働組合の問題も隠れた原因である。アメリカの自動車労組は強力だが、日本企業は影響の少ない南部を中心に工場進出していた。この労働組合に関する記述は紙面の関係でカットする部分が増えてしまったようで、非常に残念である。

 しかし、GM破綻の短期的要因は自動車労組が関係している。手厚い労働者保護がGMの財政を圧迫し、さらに自動車ローンの問題も抱え、金融・財政面でGMは圧迫されていた。

 GM破綻後は公的支援によってスピード再生したが、多国籍企業化したGMはデトロイトへ財政的な恩恵を与えることがなかった。そのことがデトロイト市破綻へとつながった。

 新聞記事を利用したアメリカ経済と自動車産業、さらに破綻したデトロイトの都市問題など幅広く展開が可能な授業実践であった。



 「国際地理オリンピック2013 京都大会 マルチメディアテストについて」 冨田 健太郎
7月30日から8月5日にかけて、国際地理オリンピックの世界大会が今年京都で開催され、世界から32の国・地域の高校生が参加して、地理の技能を競い合った。

試験は筆記、マルチメディアテスト、フィールドワークの3つにわかれ、それぞれの総合得点で順位が決まる。それとは別に各国が用意してきたポスターセッションも行われた。

テストはすべて英語で出題、解答する。

その中で、今回はマルチメディアテストを検討してみた。

マルチメディアテストはパワーポイントのスライドで写真や統計が30秒から75秒映し出され、4つの選択肢から答えを選ぶ問題である。

問題のレベルによって映し出される時間は変わるが、検討においては時間制限を設けなかった。

まず、英語で書かれたテストであるが、そのレベルは高等学校の英語で対応可能な範囲ではあるが、レベルは高い。特に短い問題文、選択肢なので、単語がわからないと何を意味しているか理解できない。地理の専門用語も知らないと答えられない。
erosion(侵食)、sedimentation(堆積)、temperate deciduous forest(落葉広葉樹林)など多数

問題によっては、英語を想像できる問題もあるが、それは地理的な知識・技能があればの話である。

問題は地域の様々な考察力が必要な問題がほとんどである。穀物の輸出量、衛星写真からモスクワの季節・時刻を考察、写真から地域・文化の読み取り・設備の用途、統計から地域の読み取りなどである。

高校地理をしっかり学習しておくことは必須である。ただ単なる知識だけではとけない問題がほとんどで地理的な考察力が必要である。

時間が限られた中で解くとなると、英語力とあわせてかなり難しい問題といえる。

 資料提供
磯 高材 「竜巻から身を守る」気象庁
「ナウキャストの利用と防災」気象庁
「急げ 火山の大噴火対策」
奥舍 憲雄 鉄道大国 日本の「成功」と「反省」鉄道ジャーナル  pdf 
「警報・注意報から表現統一 災害危険度レベル1〜5」 
岡森 啓 「デトロイト市破綻 GM復活恩恵なし」 2013.7.20(土)日経 pdf  
「オバマケア険しい船出」 2013.10.13(日) 朝日  pdf
冨田 健太郎 「米労組 南部で巻き返し」 2013.10.17(木) 日経   pdf


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